第10回箸川柳大賞公募

兵左衛門

2005年から始まりました箸川柳も今回で10回、応募総数33,000句を数えるまでになりました。これも皆様から支持をいただいてまいりました結果であると考えております。ありがとうございます。

今回は3,846句をご応募いただきましたなかから、兵左衛門社内での厳正なる審査の結果、大賞ほか、各賞が決定いたしましたので発表させていただきます。



広島県 ペンネーム/晶子様、おめでとうございます!

大賞賞品/箸職人が作るオリジナル(大賞川柳入)の携帯箸「八四郎(はしろう)」セット

講評/いかにも箸を通じて描かれた家族の幸せが溢れ、目に浮かんでくる一句です。個人の箸を用意されることで、その場所でのアイデンティティの一つとなります。まして家族において増えてゆく「マイ箸」の数々は、笑顔の数であり幸せの数でもあるのでしょう

講評/いかにも川柳らしい視点。男社会の地盤沈下は、女性の活躍の機会を増やしただけでなく、家族の中でも妻の存在感をグーンとアップ。「太め」は、頼り甲斐の視覚化でもあり、上手く箸の姿と重ねながら現代社会の一面を描き出しています。

講評/世界文化遺産に登録された富士山の話題は旬です。その富士山と対比することにより日本の箸文化を描き出した作品です。惜しいのは下五が「文化遺産」と6音で重くなり、句としてのリズム感が欠けたことでしょう。発想には大きさがあります。

講評/箸を持ったままファインダーに収まるのは、あまり品のよい仕種とはされないのでしょうが、その瞬間の笑顔は、箸が写り込むことによって、単なる幸せの顔から幸せの理由も捉えた瞬間に昇華されます。箸と映されても拘らない撮影者との心の幸せが見えます。

講評/「きれいな文字は七難隠す」とか言われますが、箸使いも同じ。一生を通して日々の生活に現れるもの。「極めたい」という思いは良く分かります。箸川柳の精神を十七音で訴えた作品ともいえるでしょう。

講評/社会に出たら、なかなか注意をしてくれる人も居なくなるであろう生活の基本のひとつ、箸使い。「今でしょう」と言う流行のキメゼリフを取り込みながら、箸使いへの思いを伝える一句です。

優秀賞賞品/箸職人が作る優秀賞川柳入り箸セット

評価/はじめて娘が連れてきた家族との対面と食事でお互いがそれぞれの立場で緊張している雰囲気が簡潔に表現されていて面白い。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+近藤氏の著書

近藤珠實(こんどうたまみ)氏

『清紫会』新・作法学院学院長。 作法をより現代社会にマッチしたものとするため、新作法「清紫会」を結成。新・作法学院で生徒指導の傍ら、テレビ、講演、執筆、社員教育などで活躍中。

評価/スマホが時代の顔になっています。電車の中で立ったまま、歩きながら、時には食事をしなが らも目を離さず、的確に画面操作をする指。なのに、生まれながらに背負ってきた日本文化の「箸使い」はイマイチ。新しいツールとの対比により現代社会の一面を描き出しています

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+尾藤氏の著書

尾藤一泉(びとういっせん)氏

川柳家。 川柳「さくらぎ」主宰。川柳学会専務理事。女子美術大学、武蔵野美術大学非常勤講師。Web川柳博物館。著書に『川柳総合大辞典』、『親ひとり子ひとり』、『門前の道』ほか。

評価/ワイルドと言う流行語にもなった軽い冗談所作は箸使いには似合いません。若い世代もお箸を美しく扱ってもらいたい物です。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸+三田村氏の著書



三田村有純(みたむらありすみ)氏

東京藝術大学美術学部教授。 日展評議員・日本現代工芸美術家協会評議員。日本漆文化研究所副理事長。

評価/日本人にとって身近な割箸。杉の香りがただよい、気持ちのいい旅の雰囲気が感じられます。 国産の割箸を使うことは、日本の森林環境保全や林業の活性化から大変有効な活用方法です。 そしてなにより、人体への安全性から考えても国産の杉や桧の割箸は是非大いに使ってもらいたいものです。

賞品/受賞された方の名前を入れたお箸

賞品/入選された方の名前を入れたお箸

※順不同

作品 お住まい
/お名前orペンネーム(年齢)
彼氏でき 箸の持ち方 まず直す 滋賀県/缶子さん(11)
母に似る 夫と箸の 使い方 愛知県/のんママさん(40)
いつ正す箸の持ち方今でしょう 東京都/あちあなんさん(50)
うちのパパ スマホも 箸も扱えず 神奈川県/怪傑もぐり33世さん(42)
握り箸 掴みそこねた あれやこれ 北海道/一本杉さん(60)
「あーん」して 新婚みたい 介護箸 宮崎県/荒尾さん(62)
グルメなど気取る以前の箸使い 東京都/野上さん(62)
サッカー派 だけど、お箸は かっとばし!! 兵庫県/白山さん(51)
婚活は箸の持ち方 変えてから 東京都/グレムリンさん(31)
箸に合う 料理を食べて 長寿国 三重県/なつかし屋さん(43)


※順不同

作品 お住まい/お名前orペンネーム(年齢)
直箸で痛いところを摘まれる 神奈川県/門坂 螢さん(64)
おもてなし 遺産登録 はし文化 大阪府/そよ風さん(57)
反抗期 箸でかっこむ 母の愛 兵庫県/しげさん(46)
壇蜜と AKBに 迷い箸 東京都/企・行倶さん(70)
箸と婿 上手に使う 我が娘 広島県/てるてるさん(61)
箸マナー いつ治すのか? 今でしょう! 東京都/キノウさん(45)
箸先で 旦那を使う 定年後 埼玉県/となみさん(53)
どうせなら 国技にしたい 箸さばき 奈良県/麗瓜さん(44)
ラブシーン 家族の箸が みな止まり 奈良県/渡辺さん(79)
俺の箸 最後の仕事は 毛虫採り 大阪府/散歩道さん(44)
直箸と 訛でつつく 里の鍋 東京都/閑鳥居さん(65)
日本人 箸の文化と 富士の山 京都府/しがらきさん(53)
脳トレに転ばぬ先の箸がある 東京都/鼓吟さん(35)
箸作法 女子力上げる 第一歩 奈良県/大和箸子さん(−)
彼の家サンマが試す箸使い 千葉県/銀次郎さん(47)

総評
上位入賞者に並んだのは女性陣。「ちょっと太目の」の句のように、女性の存在感が目立ちました。時事ネタや流行語、最新ツールなどの時代を表すモチーフを使いながら描かれる箸の表現。回を増すごとに進歩してきました。そんな中で、「子だくさん」の句は、時事でも今を描いたものでもありませんが、いかにも幸せな気持ちが伝わってくる温かさがあります。川柳という小さな形式の中でも、こんなに心が伝わるということを、改めて嬉しく思わされる作品でした。
特別審査員/尾藤一泉